日本酒ブログ

酒蔵で楽しむ日本酒~西宮から飛騨高山へ    

このBLOGは山好きのスタッフが日本の自然と日本酒についてのトピックを、酒蔵さんに教えていただきながら、みなさんにお伝えしていくシリーズです

酒蔵とは?

みなさんは酒蔵に行ったことがありますか?「酒蔵(さかぐら)」とは日本酒を作り、貯蔵する製造場のことを指す言葉で、ひたらく言うと醸造元・製造元のことになります。

日本全国には歴史のある酒蔵がたくさんありますが、なかにはお酒造りの工程を見学できたり、試飲できたりとお酒が好きな方にはたまらないサービスをしている酒蔵があります。

西宮の蔵開き

私の地元、西宮は「灘五郷」とよばれる日本を代表する酒どころ、日本酒造りに適した酒米(山田錦)とミネラルが豊富な地下水(宮水)があり、寒造りに最適と呼ばれる六甲颪(おろし)が吹き、そして製品の水上輸送に便利な港があったことから、江戸時代以降、栄えてきました。今でも海の近くに「酒蔵通り」と名前のついた大きな通りがあり、その両脇に煉瓦造りの酒造工場跡など明治以降近代化された酒蔵の跡をみることができます。 ここでは、毎年2月に5つの酒蔵が合同で開催する「西宮蔵開き」のイベントがあります。

日本酒は新米の収穫が終わった冬場に仕込みが行われるのですが、この仕込みが終わり、新酒が完成したタイミング(1月~2月)で行われるのが酒蔵の「蔵開き」。                地元の人やお客さまへの感謝をこめて、新酒のおひろめをするのですね。

酒蔵が日替わりでそれぞれの敷地を開放して、しぼりたて新酒などの試飲(有料)や福袋の販売が行われるのですが、鮨や粕汁などの飲食ブースも出て、行列ができるほどの大賑わい。                    普段は口にすることができない「しぼりたての新酒」「限定酒」を飲むことがお目当の酒好きが大ぜい集まってきます。

飛騨高山の酒蔵巡り

他に酒蔵が集まっている場所として有名なのは飛騨高山。北アルプスと両白産地に囲まれた盆地で、私が山登りに行くときには必ず通過する場所です。やっぱり酒造りの盛んなところに山アリですね!こちらは西宮の大きな酒造工場とうってかわり、昔ながらの風情のある街並みの中に、軒下に大きな杉玉や銘柄ののれんのかかった木造建築の酒蔵です。飛騨高山には半径200m以内になんと7つの酒蔵があり、いつでも酒蔵巡りを楽しむことができます。

どの酒蔵も店内で気軽に試飲(有料)ができるようになっており、コインを買って試飲サーバーで気になったお酒を飲めるものや、一定料金で何種類ものお酒を飲めるなど内容は酒蔵によって様々です。  日本酒に詳しくなくても、お酒の種類や飲み方などお店の人が丁寧に説明してくれるので安心。 さらに蔵の内部を見学したり、酒造りについて説明してもらえるツアーもあるので、調べて事前に予約しておけばより深く酒蔵や日本酒を知ることができます。

ひとつの酒蔵で何種類ものお酒を楽しむこともできますが、いくつかの酒蔵をハシゴしてそれぞれのお酒を飲み比べてみるのがオススメ。同じ日本酒でも、「こんなにも違うのか」という驚きと、「自分はこの味わいが好き!」という自分の好みを発見できるチャンスです。くれぐれも飲みすぎ注意ですが・・・。

他にも梅酒や甘酒、日本酒にあう地元ならではのつまみなどを販売していたり、レストランを併設している酒蔵も。 飛騨高山は今やインバウンドに人気の観光地で街中に外国人観光客がいっぱいですが、みなさん総じて食とお酒を楽しんでいるようでした。      

私のお気に入りは酒蔵オリジナルグッズ。酒蔵の銘の入ったお猪口や桝や工芸品の木工・漆塗りの器など、これで日本酒を飲んだら美味しいだろうな、と思う素敵なものがたくさんあります。他にも、オリジナルTシャツや前掛けなど現地でしか買えない、お土産にもピッタリな面白いグッズもあるので要チェックです。

酒蔵は経済発展の証し

それにしてもどうして、高山にはこんなに酒蔵が集まっているのでしょう? 1623年創業の飛騨で一番古い酒蔵、有限会社平瀬酒造の15代目当主、平瀬市兵衛社長にお話しをお聞きしました。

高山は標高の高い山間部にあり、田んぼ面積も少ないため、お米ができたり、出来なかったり変動があります。飢饉に対応するため豪商達が備蓄米を持っていて、飢饉が訪れると、お金を貸し付けて4~5倍の値段で売って儲けたそうです。

飢饉にならなければお米が余ってしまうため、この備蓄米をお酒に変えてさらに儲けていました。豊作の年には通常であれば、米価を下落させ農民の利益を減らすことになりますが、飛騨の豪商は農民と「米価一定の取り決め」をします。

これにより農民のモチベーションが上がり、積極的に米造りが行われるようになり、余剰米でお酒を造ることで農民たちも儲かり豪農となっていきました。さらに豪商が儲けたお金で、豪華な「高山祭」、「神社・仏閣・町並み整備」がされ経済が発展します。

今から300年前には高山に56軒の酒蔵があったというのがその証で、飛騨は江戸の直轄地(天領)として繁栄を誇った地域なのです。しかし、米不足や備蓄米など最近も聞いたような話ですね。

酒蔵の楽しみ方

近代化した西宮の酒蔵、昔ながらの町並みとともに伝統を守る飛騨高山、それぞれに街が発展した時代の歴史があります。酒蔵では、しぼりたての新酒を飲んだり酒蔵巡りをして利き酒をすることはもちろん、その街を散策して歴史や文化に触れることで、より味わいが深くなると思いませんか?機会があれば、みなさんもぜひ酒蔵を訪れてお気に入りの日本酒を見つけてください。

地酒や生酒を酒蔵からお取り寄せするなら、美のさとうまし酒 

飛騨高山の酒造 有限会社平瀬酒造店 有限会社平瀬酒造店 – 美のさと・うまし酒の酒蔵紹介

文/ Etsuko Tomari