日本酒の味わいを決める中心にいるのが「杜氏」です。 発酵の管理から蔵人の指揮まで、酒造りの現場を動かす“要”の存在です。
兵庫県朝来市の 此の友酒造 では、330年続く蔵に新しい風を吹き込む杜氏・木村さんが、その役割を担っています。木村さんは全国でも珍しい女性の杜氏です。
木村さんが杜氏になるまで
木村さんが蔵に戻ったのは2016年。 大学卒業後すぐ、自社の酒が全国新酒鑑評会で金賞を受賞し、その一口に心を奪われたことが始まりでした。
「蔵元たるもの、自社の酒造りを知らねばならない」 そんな父の言葉を胸に、広島での研修、京都・木下酒造での修行を経て、2024年に杜氏へ就任。 330年の歴史の重さに押しつぶされそうになりながらも、支えてくれる人々の存在が今の酒造りにつながっていると語ります。
杜氏として大切にしていること
修行先で何度も言われた言葉があります。「ケガをしないこと。事故を絶対に起こさせないこと」
酒造りは、誰か一人の力では成り立ちません。 蔵人が安心して働ける環境を守ることが、良い酒を生むための“土台”になる。 木村さんはその責任を、誰よりも強く意識しています。この姿勢こそが、彼女の酒造りの芯になっています。
但馬杜氏の伝統と此の友酒造の味
但馬杜氏は、兵庫県但馬地方を中心に受け継がれてきた酒造りの名門集団です。厳しい冬の寒さと豊かな自然環境の中で培われた技術は、酒の味わいに深みと力強さをもたらします。
但馬杜氏の酒は、かつて“どっしりとした旨辛”が特徴でした。 時代とともに飲みやすさも求められていますが、此の友酒造の酒は今も「辛口だけど旨味がしっかりある」と評価されています。
兵庫県産米と粟鹿山の伏流水。 恵まれた素材を活かし、手間を惜しまない。 その姿勢は、但馬杜氏が受け継いできた精神そのものです。
此の友酒造が目指す酒
木村さんが目指すのは、 「ここでしか醸せない、唯一無二の酒」。
鑑評会で評価されるような美しい酒はもちろん、小さな蔵だからこそできる手造りの強みを活かし 飲んだ人の記憶に残る“忘れられない一杯”をつくりたいと考えています。
そのためには、蔵人と話し合いをし、方向性を共有することが大切だと語ります。
酒造りに挑戦したい人へ
全国に1500ある蔵の中で、女性の杜氏はまだ数十人ほど。 体力・集中力必要な厳しい世界ですが、ある女性経営者に言われた「頭を使えばなんでもできる」という言葉を支えに工夫をこらし、知恵を絞り、壁を乗り越えてきました。
麹の香りや変化を感じる力は、その人自身の感性。 その感性が、誰かの心を動かす酒になる。 「性別に関係なく、自分の感性を酒造りに活かしてほしい」と、語ってくれた木村さん自身も日々挑戦を続けています。
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文/ Etsuko Tomari